【読書】人気者になれないなら「ハッカー」になればいい。非凡なものを創造するためのアイディア:「ハッカーと画家」

Book

はじまり

135ml
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今回は、タイトルと表紙のイラストでつい買ってしまった本の書評を綴ります。

リサちゃん
リサちゃん

あいよー。

「ハッカーと画家」の冒頭

(「ハッカーと画家」カバー表紙)

この「ハッカーと画家」は、著者:Paul Graham氏、監訳:川合史郎氏で執筆されています。

著者のPaul Graham氏は、こんな方です。

ポール・グレアムは新しいArc言語の設計者である。彼は最初のウェブベースアプリケーションであるyahoo! Storeを作った。また、現在の多くのスパムフィルだに影響を与えたフィルタリング技術も開発した。ハーバード大学で計算機科学の博士号を取得しており、ロードアイランドデザイン学校(RISD)およびフィレンツェの美術学校で絵画を学んだ。

(カバー文より)

著者自身は、学生時代には「人気者」とは程遠かったらしいです。

例えば、人気の度合いでA〜Eまでランク分けした(Aはフットボールの選手とチアリーダー、Eは「知恵遅れ」と言われていた子たち)としたら自分はDクラスだったとか、子供は同じような人と友だちになるが自分の周りは「オタク」ばかりだったとか。

そういった学生生活を送っていたことを著者が語るところから、本書は始まります。

それに加えて、著者は淡々と以下のように述べています。

私の知り合いには学校時代にオタク(nerd)だった人がたくさんいるが、皆同じ話をする。賢いこととオタクであることの間には極めて強い相関があり、オタクであることと人気者であることの間にはもっと強い負の相関があるというものだ。賢いとむしろ不人気者になるみたいなんだ。

(7ページ「第1章 どうしてオタクはモテないか」より)

これは、あくまでも「人気者はもれなくバカだ」という対偶を指しているわけではない。(と思います。)

不人気者サイドにいた人は、概ね「賢いとむしろ不人気者になる」という思考をするのだと思う。ちなみに、僕も不人気者サイドにいた人間なので、この考え方にはつい共感してしまいます。

じゃあ、「不人気な人っていうのは生まれつきなんだね〜」というかと言うと、それは違います。

本書では、以下のように述べられています。

例えばティーンの子供は服装にものすごく気を遣う。意識して人気者になるために服を選んでるわけじゃないだろう。ただ格好良くしていたいだけだ。でもそれは誰にとってだ?他の子供たちにだろう。他の子供たちの意見が、服装だけでなく歩き方から何からすべてについて、何が正しいかを規定する。だから、得ようとする努力にもなるんだ。

オタクにはこれが分からない。人気者になるには努力が必要だということに気付かないんだ。一般的に、大変な努力が必要な分野を外から見ている人には、成功するためにどれだけの絶え間ない頑張りが(しばしば無意識のうちに)必要かということが見えにくい。例えば絵を描く能力は、ちょうど背の高さみたいに天賦の資質だと思っている人は多いだろう。実際は「絵が描ける」人は描くことが好きで多くの時間をそれに費やしたんだ。だからうまく描けるんだ。同じように、人気者ということも天賦の資質ではない。人は努力して人気者になるんだ。

(9ページ「第1章 どうしてオタクはモテないか」より)

人気者になる人は、「人気者になる」ことに時間を費やしたから人気者になっ。絵が描ける人も、「絵を描く」ことに時間を費やしたから絵が描けるようになった。

自分の好きなことに時間を注げば、それ相応の結果が得られる。一応そんな感じでしょうか。

「オタク」も自分の好きなことに時間を注いだ結果、体現する人種ということでしょう。

そして、「オタク」は、人気者になる人(他の子供たちと調和が取れる一般解を導き出す志向の人)とは、逆の存在であるように述べられています。

「ハッカー」とは?

本書で、「ハッカー」という存在は以下のように述べられています。

え、ハッカーだって? それってコンピュータに侵入する連中のことじゃないの? うん、外部の人にとっては、ハッカーという言葉はそういう意味だ。けれどコンピュータの世界では、優れたプログラマたちが、やはり優れたプログラマのことを指してハッカーと呼ぶんだ。

(vページ「はじめに」より)

新しいアイディアが好きなら、この本は楽しめるんじゃないかと思う。ハッカーは見かけは野暮ったいことが多いけれど、その頭の中はびっくりするほど面白い場所なんだ。

(viiページ「はじめに」より)

つまり、ハッカーとは、自分が思いついたことを表現するのが好きな優秀なプログラマのことを指しています。

ハッカーと大企業

著者が開発したシステムが買収されたときのことが述べられています。

大学や研究所がハッカーに本当にやりたいことをやらせてくれないとしたら、企業に行くしかないのだろうか。残念ながら、多くの企業はやっぱりハッカーにやりたいことをやらせてはくれない。大学や研究所はハッカーに科学者たれと強要するが、企業はハッカーにエンジニアたれと強要するからだ。

私はこのことにはごく最近になるまで気付かなかった。ViawebがYahoo! に買収された時、彼らは私に何をやりたいか尋ねた。私はビジネスには全然興味がなかったので、ハックしたいんだと答えた。Yahoo! に入ってみたら、そこではハックするということはソフトウェアを実装するということで、デザインするということではないということが分かった。プログラマは、プロダクトマネージャのビジョンとかいったものをコードへと翻訳する技師とみなされていた。

どうも大企業ではそれが普通らしい。そういうふうにすれば、出力のばらつきを抑えることができるからだ。

(27ページ「第2章 ハッカーと画家」より)

大企業では、「ハック」はほぼ行われないらしいです。理由は、本当に優秀なハッカーを沢山の社員の中から探し出すのが大変だからだそうです。そのため、委員会みたいなものを作って、その決定をソフトウェアに落とし込むプロセスを組まれているようです。

そのため、本書では「ハッカー」は大企業よりもベンチャー企業の方がその素養を活かせると述べられています。

これまでの様々な要素を図示すると、このようなイメージでしょうか。

ハッカーと画家

本書にて、ハッカーと画家の深い共通点が述べられています。

そのイメージはどちらも正しくない。ハッキングと絵を描くことにはたくさんの共通点がある。実際、私が知っているあらゆる種類の人々のうちで、ハッカーと画家が一番よく似ている。

ハッカーと画家に共通することは、どちらもものを創る人間だということだ。作曲家や建築家や作家と同じように、ハッカーと画家がやろうとしているのは、良いものを創るということだ。良いものを作ろうとする過程で新しいテクニックを発見することがあり、それはそれで良いことだが、いわゆる研究活動とはちょっと違う。

(23ページ「第2章 ハッカーと画家」より)

つまり、ハッキングとは、デザインすることと似ており、研究活動つまりエンジニアリングとは異なるということなのです。

そのため、ハッカーとエンジニアは違う人種ということになります。ここは個人的にハッとさせられました。僕自身は、最近までシステムエンジニアとして働いていましたが、現在は配信活動をしながら効率化出来る部分はプログラムを組んでいます。

僕は、エンジニアではなく「ハッカー」でした。

設計・デザインのコツ

そして、ハッキングのコツが紹介されていきます。

絵画の例からひとつ学べること、少なくとも確認できることは、ハッキングをどうやって学んだらよいかということだ。

絵を描くことは、絵を書きながら学ぶ。ハッキングも同じだ。

画家は作品を足跡として残してゆくから、彼らが絵を描きながら学んでゆく様子をうかがい知ることができる。

ハッカーもたぶん、画家と同じように振る舞うのがいいんじゃないかと思う。ひとつのプロジェクトを何年も続けて、新しいアイディアを新バージョンとして取り込むのではなしに、時々はゼロから始めてみるんだ。

(30ページ「第2章 ハッカーと画家」より)

描きたい絵があるから絵を描く。ハッキングしたいことがあるからハッキングする。

そうやって、ハッキングに取り組んでいって、時には先人が創ったプロジェクトのソースやイシューを見て、自分のこれからのハッキングに取り入れていく。GitHubの有り難みがとても染みます。

ハッカーは、色々なプロジェクトを見聞きしてセンスを磨くべきなのです。

ハッキングのコツがもうひとつ紹介されています。

絵画から学べるもうひとつの例は、次第に詳細化しながら創ってゆく方法だ。絵画はたいてい、スケッチから始まる。そして次第に細かい部分が埋められてゆく。だがそれは、単に隙間を埋めてゆくだけの過程ではない。ときには元の計画が間違いだったことが分かることもある。X線で見てみると、手や足の位置が変更されていたらい、表情が変えられたりしている絵画は数え切れないくらいある。

(31ページ「第2章 ハッカーと画家」より)

ハッキングおよびプログラミングする際には、概要→詳細と設計を詰めていくのが基本です。この基本の流れは絵画にも通じるものがあり、絵画も、ラフスケッチ→線画→着彩という流れでデザインしていくのが主流かと思います。ハッキングと絵画の共通点がここにもあったのです。

そして、その設計・デザインは、その都度修正していくのは当たり前であることも述べられています。プログラミングする上で、アジャイル開発をするのが当然の工程と言えるわけです。

まとめ

今回、「ハッカーと画家」を読んだ僕なりのまとめです。

  • 創作活動に対して、オタク気質な人は個人的に取り組み、そうではない人は組織的に意思決定しながら取り組む方式で分かれがちである。「ハッカー」はほぼ前者である。
  • ハッキング、絵画や楽曲などの創作活動に取り組むにあたって、ラフに全体像を描いてから詳細部分を詰めていく方式が最も成果を得やすい。先人の著名なオタクもそうしている例がほとんどである。
  • 人気者になるか、オタクになるか。この結果は、その人の嗜好によることが大きい。

おしまい

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自分の嗜好に合った言動、手段を日々模索していきましょう。

リサちゃん
リサちゃん

人気者になれないなら、ハッカーになってもいい。

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ハッカーと画家

以上になります!

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